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教授
鶴 正人

情報ネットワーク

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研究紹介

1969年に始まった米国国防総省のARPAnetが起源と言われるインターネットは、米国の大学や研究所の計算機を結ぶ実験的な相互接続として技術的な成長を続けましたが、1980年代末からの商用利用によって急速に発展し、現在では、企業、官庁、学校等の組織内の計算機ネットワーク、さらには家庭や個人の持つパソコンや携帯端末を、 IPプロトコルという共通的な通信手順によって、地球規模で相互に接続しています。
IPネットワークは、モデル的には、エンドノード(ネットワークの端:ネットワークを介して情報サービスを利用しているパソコン等やその情報サービスを提供しているwwwサーバ等)と中継ノード(ネットワーク内部:ルータと呼ばれる中継装置)が様々な通信媒体(リンク)によって網状に連結されることによって、任意のエンドノード間のデジタル情報の相互交換(通信)を可能にしているシステムと考えられます。そこでは、様々な情報サービス、例えば、情報取得・発信、会話・放送、遠隔/分散利用・操作等、を提供することができ(Everything on IP)、一方、様々な通信媒体、例えば、光ファイバ、電話回線、ケーブルテレビ、無線等、を利用して構築することができます(IP on everything)。
その結果、今や社会や経済のインフラストラクチャの役割を担い始めましたが、それに伴って、広い意味の通信の「品質」、すなわち、性能や効率、公平性、信頼性、安全性(セキュリティ)等が問われるようになってきました。また、IP電話、動画配信や遠隔会議、さらにはEコマースや遠隔医療等、従来のインターネットの使い方に比べて、データ量が多かったり、通信品質に敏感だったりする使い方が増えてきたことも、品質管理の必要性を高めています。
特にインターネットにおける品質劣化の大きな原因の1つは、共有資源に対する利用の集中ですが、それを減らすには、時間的空間的な競合回避のための方針(管理)が必要になります。例えば、(i)利用の自然なランダム性に任せる; (ii)状況の把握(計測)に基づく緩やかな制御;(iii)厳密な事前予約、などが考えられますが、時間的空間的な相関が強まっている現状では既に (i)だけでは堪えられなくなっており、一方、(iii)では資源の利用効率が悪く、スケーラビリティにも問題があるため、(ii)の実現のための適応的な資源の割り当てや利用が、重要課題になっています。

一般に情報通信ネットワークにおいて、その品質を維持/向上するためには、運用中のネットワークの構成要素やそこを通過するデータ流(フロー)の状態を監視/計測し、状況に応じて各フローの量、優先度、通り道(経路)等を制御したり、異常事態に対処したり、さらにはネットワーク自体の構成変更や増強を行なう必要があります。また、それらはタイムリーかつ効果的・経済的に行なわれる必要もあります。
この時、その全体は、監視/計測(情報収集)→推定/解析(把握)→制御/設定変更(対応) →(情報収集)→(把握)、というフィードバック系のサイクルと捉えることができますが、計測、解析、制御に各段階において、信頼性のある手法を開発するには、フローや異常事態等の特性が解析・予測可能なように「モデル化」されていることが前提です。一方、そのモデル化には、実際の通信特性を計測し、そのデータを分析することが不可欠です。さらに、通信機器、プロトコル、アプリケーションの開発や、ネットワークの構成設計においても、モデル上での解析や実ネットワークでの計測データに基づいた数値実験(シミュレーション)を用いて品質を設計します。
このように、「計測・推定」「モデル化」「制御・設計」の技術が三位一体となって、品質管理を支えています。ところが、インターネットにおける品質管理では、

  • 様々なネットワークの集合体であるインターネットは、規模が非常に大 きく、かつ管理主体が分散
  • 様々なサービスを様々な利用者に提供するインターネットでは、要求される 通信品質が多様
  • 様々な通信媒体/形態やアプリケーションが混在するイン ターネットでは、引起こされるフローの特性が多様

なので、従来の電話網や専用回線等の品質管理のための技術だけでは十分でなく、多くの研究課題が存在しており、世界中で活発な研究が行なわれています。

研究室紹介

本研究室は、平成15年4月から始まった新しい研究室ですが、尾家研究室、川原研究室と密接に連携し、他大学や民間企業、あるいは産学官連携プロジェクトとの共同研究も行ないながら、インターネットのような大規模ネットワークにおける管理・制御に必要な技術を研究していきます。具体的には、現在、2つの問題点に焦点を当ています.1つは,大規模あるいは分散管理のネットワークの動的特性は,直接的または全体的な計測が困難な場合が多く、それをどう克服するか(動的特性の計測・推定技術)、であり、もう1つは、多様性の大きなネットワークでは、それぞれに最適な制御・管理を行なうためには、ネットワークがある程度賢くならないと困難な場合があり、それをどう実現するか(アクティブネットワーク技術)、です。