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教授
小田部 荘司

超伝導物性工学、超伝導材料工学

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研究紹介

小田部研究室では超伝導体の電気的特性をさまざまな手法により測定し評価することを行っております。こうした評価結果を超伝導材料開発や超伝導応用機器の設計に役立てています。

超伝導体新素材の臨界電流の測定と評価

新素材の高温超伝導体においては臨界電流の特性を明らかにする必要があります。実際に超伝導体を使って応用するためには、さまざまな温度や磁界中での臨界電流の値が必要となるためです。本研究室では、SQUID(超伝導量子干渉計)を使った磁化ヒステリシス測定や磁化緩和法、Campbell法、四端子法、第三高調波電圧解析法などさまざまな手法を駆使して超伝導体の臨界電流特性の評価を行っております。

そのためにLabViewやC言語を使った測定用のプログラムを開発し、測定機器をコンピュータから制御して、超伝導体の温度や印加される磁界を制御し、またさまざまな物性値を測定しています。

1000A通電用超伝導トランス

超伝導体はなにぶん臨界電流が高いので電流を流すのはなかなか大変です。さらに交流電流を流そうとすると、すごく高価な電源が必要になります。たとえば300Aの交流電源は1,000万円します。大きさは1トンにもなります。300Aというと家庭の電流契約は40Aくらいでしょうから約8件分の電流に相当します。

トランスはご存じでしょうか。二つのコイルを組み合わせて電流と電圧を巻き数比に応じてあげたりさげたりすることができます。そこで
巻き数比の極端なトランスを作ります。一次側は100回巻いて、二次側を1回しか巻かないと、入力電流1Aを出力100Aにすることができます。普通の銅線を使ってこのトランスを作っても実際には電気抵抗のために100Aを取り出すことができません。そこで、超伝導線を使います。それにより入力は10A程度で出力は1000Aという電源を作ることができます。

本研究室では、酸化物超伝導線を使った超伝導トランスを、冷凍機で直接マイナス240度まで冷却することにより超伝導状態にして、1000Aの電流を得ることのできる装置を開発しました。特徴として次のようなことがあげられます。

  • 装置を大幅に小型化できます。
  • 特殊な配電を必要とせず、15Aの交流電流源を用意すればOKです。
  • 試料の温度を30Kから80Kくらいまで変えることができます。
  • 高価な液体へリウムで冷却する必要がなく、冷凍機の電源と冷 却水のみで運転が可能です。

この超伝導トランスを使って酸化物超伝導体試料に交流電流を流して、さまざまな温度での交流損失を測定しています。超伝導体は直流電流では電気抵抗がゼロですからほとんど損失がないのですが、交流電流ではわずかですが、損失があります。要するに熱がでるわけです。幸いにも交流損失は臨界電流が高いと小さくなる傾向があります。臨界電流が高く、交流損失が低い材料の開発のためにも正確な測定が必要とされています。測定された結果は有限要素法を用いた解析と比較しています。