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准教授
大西 圭

ソフトコンピューティング、感性情報処理、情報ネットワーク

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研究紹介

人間+生物にヒントを得た計算+ネットワークシステム

 私たちの研究室では、人間社会と機械システム(ネットワークシステム)が調和して持続的に発展していけるように、人間社会と機械システムの間のインタラクション(相互作用)を伴う新たな人間中心のシステムを考案・開発しています。その核となる技術は、システムに適応性をもたらすことができる進化計算手法であり、新たな進化計算手法の考案も行っています。

具体的には、以下のような方針で研究を行っています。

(1)生物進化など、生物界から工学的に有用な知見を得る。
(2)生物界からヒントを得た情報処理の仕組みを考える。特に生物進化からヒントを得る。

 近年、情報処理の研究分野では、生物のあり方にヒントを得た様々な方法が考案され、それらの工学的な応用が盛んです。例えば、生物の遺伝や進化にヒントを得た進化的計算手法は最適化手法として用いられ、また、脳の情報処理にヒントを得たニューラルネットワークはパターン認識やモデリングなどに用いられています。このような生物のあり方にヒントを得た方法に共通する特長の一つは、生物と同様に、様々な環境(問題)において、柔軟に対処することできることです。

(3)生物界からヒントを得た情報処理の仕組みを利用して、人間社会と生活インフラとなったネットワークの間の新たなインタラクションをデザインする。

 現在、計算機やネットワークの急速な進歩により、ユビキタスネットワーク社会の実現が進められています。そこでは、人間は、要求を明示的に示さなくとも、求める情報サービスが提供されることが期待されています。この世界では、人間と機械(計算機やネットワークなど)の間の大きな情報処理速度の差を利用して、機械が人間の求めるものを、たくさんの計算を通じて推測します。しかし、そのような状況では、機械は人間にとってますます分からないものになり、人間は機械に対してますます受動的になると思われます。したがって、ネットワーク社会の主役である人間と機械がより調和した世界を作るためには、機械には無い人間の能力、例えば、様々な異種の情報を統合して総合的に判断する能力や経験に基づく直感など、を積極的に利用することが必要になると思われます。

(4)デザインしたインタラクションを核とした人間中心のネットワーク応用システムを考案する。

 以上に述べたような生物のあり方にヒントを得た柔軟な情報処理の方法と、社会インフラとなったネットワークと、ネットワーク社会の主役である人間が融合・調和した、効率重視だけではない新しいネットワーク応用システムの考案を目指しています。

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研究テーマ例 : 進化計算手法とネットワークと人間の融合

 現在、ネットワークは、人間社会にとって必要不可欠なものになっており、様々な恩恵をもたらしてくれています。ネットワークの進歩は目覚ましく、その規模やその上の通信の速さも大きくなり続けています。一方で、一般の人にとっては、ネットワークの進歩が速すぎて、それが何をしてくれているのかがますます分からなくなっています。つまり、人はネットワークに対して受け身な状況であると言えます。しかし、人間社会の主役はあくまでも「人」であり、人はネットワークに対してもっと能動的であるべきです。人間社会が人を主役として持続的に発展するためには、「人がネットワークに対して望んでいることを伝え、ネットワークがその要望に応える」という人とネットワークの対話を実現することが必要だと考えます。そこで、私たちの研究室では、ネットワークが利用者から評価を受取り、その評価に基づいて、生物の進化に学んだ仕組みでネットワークの特性を適応させる、という方法論を研究しています。この方法論は、特定のネットワークの形態にのみ用いることができるものではありません。例えば、ファイル共有ソフトで悪名高くなってしまいましたが技術的には様々な可能性を持つP2Pネットワークや、無線のアクセスポイント群が相互に接続して作る無線メッシュネットワークなどを対象として研究を進めています。
 この方法論においては、利用者は、ネットワークの形態によらず、利用しているサービスやアプリケーションの使用感に基づいてネットワークに評価を返すことになります。ネットワークの特性を変化させる生物の進化に学んだ仕組みは、生物の進化と同様に、適者生存の考え方に従うものです。

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