TOP > 研究紹介 > 大越 正敏

教授
大越 正敏

磁気工学、薄膜工学、応用物性

ホームページ

研究紹介

 磁気記録における面記録密度は10年に10倍の割合で向上してきており、現在では1ビットを1μ㎡に記録できるものが実用化されようとしています。情報を一時的あるいは半永久的に蓄積するインフォメーションストレジ、すなわち時間的に伝達する情報記録技術なしに情報化社会は成り立たないことはもちろん、マルチメディア時代の情報処理システムには大容量で高速な情報ストレジデバイスやサブシステムが不可欠です。
 磁気記録メディア自体には現状でもまだ1000倍の記録は可能ですが、このように微小なビットを書き込み・読み出す手法の探索が、21世紀に向けて強く求められています。これにはスピンの挙動に立ち戻った微視的な磁気工学、いわばスピン工学とも呼ばれるものの構築が必要であり、本研究室では新システムの開発や新材料の創製に関する研究を行っています。

高密度・大容量・光磁気メモリの研究

 光磁気メモリは書き換え可能な大容量メモリとして、コンピュータ用(MO)、オーディオ記録用(MD)のシステムが実用化されています。光磁気メモリは、磁気記録の特徴である“反復使用性”、“ランダムアクセス性”、“不揮発性”だけでなく、光記録の特徴である“非接触性”、“媒体可換性”、“高密度記録性”をも兼ね備えた優れた記録方式です。しかし、文字、音声、画像などの情報を全てデジタル化して処理を行うマルチメディア時代においては、光磁気メモリーの一層の高密度化、高速化、および高信頼性化が要請されています。
 光磁気メモリは磁性体の中における磁化の向きによって、デジタル化された2値情報を記憶していきます。記録はレーザー照射し、バイアス磁界を加えることにより行います。情報の再生はやはりレーザーを用いて磁気光学効果を利用して読み出します。現在実用化されている記録媒体はTbFeCoアモルファス合金膜ですが、飛躍的な高密度化を可能にする次世代の光磁気メモリ材料としては、磁気光学効果の大きな新材料の開発が最も重要な研究課題になっています。
 本研究室では、レーザーアブレーション装置を用いて新しい人口格子・磁気光学材料の開発に取り組んでいます。

スピン・トランジスタの基礎研究

 巨大磁気抵抗(GMR)効果とは、ある種の磁性多層膜の電気抵抗が磁界を加えることによって数%から数10%も変化する現象のことです。この効果は、磁界センサーとしていろいろな応用が考えられますが、最も精力的に研究開発が進められているのが、ハードディスク読み出しヘッドへの応用です。ハードディスクの面記録密度は1990年頃までは、年30%の記録密度の向上であったものが、1990年以後は60%にもなっています。これは、従来から知られている磁気抵抗効果を利用したMRヘッドの開発が進められた結果です。1998年には、巨大磁気抵抗効果を利用したGMRヘッドが実用化され、さらに記録密度が高められようとしています。
 本研究室では、スピンの輸送と注入という新しい現象に挑戦するため、超微細構造の創製に向けて基礎的な取り組みを行っています。

レーザーやプラズマを利用した磁性薄膜の作成と物性の研究

 Fe、Coなどの磁性金属とPtやCuなど磁性を持たない金属を1原子層から数10原子層の厚さで交互に積層した磁性多層膜・人工格子は、単体金属や熱平衡状態にある合金とは、まったく異なった性質を示します。近年、このような人工的な磁性材料に関する研究が非常に盛んとなり、光磁気メモリ材料として優れた特性を示すPt/Co多層膜やGMR効果を示すCo/Cu多層膜などが開発されました。
 本研究室では、レーザーアブレーションという新しい薄膜作製法を用いて人工格子を作製し、その構造や磁気特性、磁気抵抗効果、磁気光学特性などを調べています。ごく最近では、CoとCuを1原子層の厚さで積層した薄膜において、今まで知られていなかった新しい磁気的相互作用を発見し、学会の注目を集めています。