研究紹介
スイッチング電源を用いた通信システム
電話をはじめとする有線通信システムでは、通信線をエネルギー伝達のための電源線としても利用することが多い。普通、大電力の電源を設置し、それから各端末へ電源を供給する。この場合、端末は低価格で容易に接続できるが、主電源が故障すると通信システム全体がダウンするため、信頼性の観点から問題がある。そこで、当研究室では、入力端末(送信器)に小電力のスイッチング電源を使い、主電源を置かない方式を提案した。各端末から同時に電源供給を行うと共に、データ送信時は送信信号によって供給電圧波形を一時的に変化させることで通信を行う。図1に、システムの構成例を示す。この方式によれば、並列冗長系と呼ばれる極めて信頼度が高いシステムが実現できる。端末のうち何台かが故障したとしても、他の正常な端末は通信を続けられ、故障した端末を取り外して修理できる。システムの増設・削除も自由に行える。送信のための変調方式はデジタル、アナログのいずれも可能である。
可変容量素子を用いた交流安定化電源
電子機器の多くは、商用交流(周波数が60Hzまたは50Hzで電圧の実効値が100V)を電源としている。電子回路は一定の直流電圧で動作するように設計されるのが普通であるから、交流電圧から一定の直流電圧を作る装置(交流入力安定化電源)が必要である。家庭用の機器は、1台あたりの電力は小さい。従って電源電流も小さいが、その波形が正弦波ではなく図2(a)のように歪んでいることが多い。機器が極めて多数使われるため、全体の電流の歪みが大きくなり、これが原因となって故障や火災などの問題を起こすようになった。そこで、当研究室では、電力変換回路に可変容量素子と呼ぶ新しい部品を考案して使い、スイッチング電源をこの素子の制御用として用いる方法を提案した。電力が通る部分に損失が少ない部品を使うので、電力の無駄が極めてすくないことが特長である。図2(b)に、この装置の電源電流の波形を示す。